脊髄小脳変性症

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脊髄小脳変性症とは?

脊髄小脳変性症とは?

脊髄小脳変性症とは、主に小脳の神経細胞が少しずつ変性・萎縮していくことにより、思うように体を動かせなくなる病気です。
厚生労働省の指定難病のひとつであり、歩行のふらつきや手の震え、発音のしづらさなどを引き起こします。
この病気は「脊髄小脳変性症」という一つの病名ではなく、さまざまな原因や遺伝的背景をもつ複数の疾患の総称です。
変性が起こる部位は小脳だけでなく、脳幹・脊髄・末梢神経などに及ぶこともあります。
そのため、どの部位に変化が起きているかを正確に把握し、個々に合わせた治療方針を立てることが大切です。
症状が似ていることから、初期にはミトコンドリア病やプリオン病などと区別が難しい場合もあります。
遺伝的な要因が関わるタイプもあり、日本では「SCA3(マシャド・ジョセフ病)」や「SCA6」などが多くみられます。

脊髄小脳変性症の主な症状

脊髄小脳変性症では、運動を調整する働きを持つ小脳の機能が徐々に低下するため、次のような症状が現れます。

  • 歩くとふらつく、まっすぐ歩けない
  • 手が震えて細かい動作がしづらい
  • ろれつが回らない、言葉が聞き取りづらい
  • 物を飲み込みにくい(嚥下障害)
  • 全身の動きがぎこちなくなる
  • 感覚が鈍くなる、しびれがある
  • 排尿障害や便秘が起こる

これらの症状はゆっくりと進行し、急に悪化することはまれです。
初期には「なんとなく歩きにくい」「つまずきやすい」といった軽い異変から始まり、次第に体のバランスを取ることが難しくなっていきます。

脊髄小脳変性症の原因と分類

脊髄小脳変性症は、原因の違いから大きく2つのタイプに分けられます。

孤発性(特発性)脊髄小脳変性症

遺伝によらず発症するタイプで、全体の約7割を占めます。
このうち約3分の2が「多系統萎縮症(MSA)」、約3分の1が「皮質性小脳萎縮症(CCA)」です。
多系統萎縮症では、小脳だけでなく自律神経や運動機能をつかさどる領域にも変性が及ぶため、排尿障害や血圧変動などがみられることもあります。

遺伝性脊髄小脳変性症

全体の約3割を占め、主に常染色体優性遺伝形式をとります。
親から子へ遺伝するタイプで、日本では以下の病型が多く報告されています。

SCA3(マシャド・ジョセフ病)

日本で最も多いタイプで手足のふらつき、眼球運動障害などが特徴です。

SCA6

中高年期に発症しやすく、比較的進行が緩やかです。

DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)

若年発症例ではけいれんや精神症状を伴うこともあります。

これらの病気では、遺伝子の塩基配列の一部が異常に繰り返される「CAGリピート異常」が原因とされています。
この異常により作られるタンパク質が神経細胞に蓄積し、細胞死や変性を引き起こすと考えられています。

脊髄小脳変性症の検査と診断

問診・神経学的診察

家族歴や症状の経過を詳しく伺い、歩行の状態・言語・筋力・協調運動などを確認します。
遺伝性が疑われる場合は、家族の発症歴も重要な手がかりとなります。

MRI検査

MRIでは、小脳や脳幹の萎縮の程度を確認します。
また、他の疾患(脳血管障害・腫瘍・炎症など)が関与していないかを精密に評価します。
必要に応じて血流状態をみるMRI血流検査(ASL)を併用し、脳の活動低下の範囲を把握することもあります。

末梢神経伝導検査

手足の神経に電気刺激を与えて、伝達速度を測定します。
しびれや感覚障害がある場合、末梢神経の障害が合併していないかを確認します。

遺伝子検査

特定の原因遺伝子を持っているかを確認する検査です。
実施には専門医の判断と事前のカウンセリングが必要であり、公的助成の対象となることもあります。

鑑別のための追加検査

脳血流SPECTや血液検査などで、アルコール性小脳変性症や代謝性疾患など二次的な原因を除外します。

脊髄小脳変性症の治療と経過観察

脊髄小脳変性症に対する根本的な治療法は現時点で確立されていませんが、進行を遅らせ、生活の質を保つための治療が行われます。

薬物療法

小脳失調に対しては「タルチレリン(TRH誘導体)」の内服が第一選択です。
また、筋肉のこわばりやふらつきには抗けいれん薬(メキシレチン)、めまいや反復発作にはアセタゾラミド、パーキンソン症状にはL-ドパ製剤などを使用します。
症状に合わせて薬を組み合わせながら、できる限り動作の安定を目指します。

リハビリテーション

歩行訓練やバランス訓練などの理学療法を継続することで、筋力低下の予防や転倒リスクの軽減が期待できます。
言語療法や嚥下リハビリも、日常生活の自立を支える大切な要素です。

生活サポート

排泄障害や便秘などの症状には、薬や導尿のほか、生活リズムの調整・栄養指導も含めてサポートします。
進行に伴って介助が必要になる場合でも、適切なリハビリと支援により生活の質を維持することが可能です。

早期発見と適切な対応につなげましょう

早期発見と適切な対応につなげましょう

脊髄小脳変性症は、早期の発見と継続的な管理がとても重要です。
歩行時のふらつきや手足の震え、ろれつのまわりにくさなどの症状がある場合は、脳や小脳の異常が関係している可能性があります。
「年齢のせい」「疲れのせい」と思って放置してしまうと、症状がゆっくりと進行してしまうこともあります。
神戸市灘区・六甲駅近くのふくしまクリニックでは、MRI検査による小脳・脊髄の精密な画像診断を行っています。
当院では閉塞感の少ないオープン型MRI装置を導入しており、リラックスした状態で検査を受けていただけます。
予約状況に応じて即日検査にも対応しており、平日・土日いずれも実施可能です。
気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

電話078-803-8606

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